今更ながら、「キングギドラ」のホモフォビア歌詞を検証する。

 いちいち真面目に取り上げるのも大人気ないとは思うのだけれど、書いている本人はいたって大真面目だったりするかもしれないから、あえて“ダメ出し”しておく。

「ENJOY MAX」なる雑誌(刊:笠倉出版社)の『日本最強アーティスト列伝!!』という特集記事の中で、<差別イクナイ!ってヒップホップにも当てはまるのか!? キングギドラと題し、ヒップホップ・グループ「キングギドラ」が同性愛者およびHIV陽性者を差別する内容の作品を発表した事件について、キングギドラ側を一方的に擁護する、きわめて偏向した無記名記事を掲載している。

 商業主義に毒された偽物ヒップホッパーが跋扈しているが、活動を休止していた伝説のヒップホップグループ・キングギドラが2002年、6年ぶりに活動を再開。マキシシングル『UNSTOPPABLE』と『F・F・B・』の2枚を同時に発売し、どちらもオリコンチャートの10位以内に入るヒットとなる。しかし『UNSTOPPABLE』は収録曲『ドライブバイ』の同性愛者差別により、『F・F・B』は表題曲のHIV患者への偏見女性蔑視により、どちらも発売中止となる。
ニセもん野郎にホモ野郎(中略)
だってわかっててやってんだろう
そのオカマみたいな変なの(中略)
おめえの連れたアバズレのレズに
火の粉かけたくなきゃバッくれろMC

(作詞‥ZEEBRAK DUB SHINE/作曲‥ZEEBRA
 この歌詞は『ドライブバイ』の問題箇所である。抗議を受けた発売元は、すぐにCDの回収、出荷停止を決定。
『F・F・B』は、「簡単にお持ち帰りできる女性」という「Fast Food Bitch」を略したもの。歌詞の「バリューパック おまけはHIVなどが特に問題となり、このCDも回収、出荷停止となっている。
 この程度で大騒ぎされるようなら、やはり日本のヒップホップシーンは偽物と思わざるをえない。格好だけなら話は別だが。

 そうした差別表現を「問題」として抗議したのはどこの誰なのか。「この程度で大騒ぎされるようなら」の“この程度”というのは何を基準に判断しているのか。差別表現に対して抗議をする人がいたからといって、なぜ「日本のヒップホップシーンは偽物と思わざるをえない」という帰結になるのか。基本的な情報や論拠すら提示することなく、ライターの側が自己完結しているため、読者の側には事件の概要すら把握できない。

 不誠実なライターに代わって補足しておくと、同性愛者差別の箇所について抗議したのはゲイの市民団体「すこたん企画」(現「すこたんソーシャルサービス」)である。
 このような抗議活動については賛否両論あるだろうけれど、当然、抗議する側にも言い分があるはずだ。それを「差別イクナイ!」などとふざけた言葉で戯画化し、あたかも抗議した側が表現の自由を不当に侵害しているかのごとく印象操作する。こうした論法は、読者に一面的な解釈を押し付けるプロパガンダの手口であり、中立公正な視点に則った「批評」とは到底言い難い。

 そもそも「日本のヒップホップシーン」とやらが本物であろうと偽物であろうと、そんなものはヒップホップを嗜好する側が勝手にこだわっているだけであって、普遍的な価値基準ではない。差別表現を嫌悪する側の視点が、まるで織り込まれていないからである。

 私見を述べるなら、ホモフォビアペドフィリアやスカトロと同様の「ヘンタイ趣味」として認識しているし、社会的弱者を差別することで金儲けする「シーン」など、きれいさっぱり消えてなくなってくれたほうが世の為人の為だと思う。それが暴論だというなら、せめて白人至上主義Oi!パンクのようにアングラの世界で同志だけに向けてこっそり売ればいいのであり、メジャーの流通に乗せる意義を見い出すことができない。

 それにしても、このテの規制の問題になると、なぜだか決まって規制を受けた側がさも権力に抑圧された犠牲者であるかのように美化される。「表現の自由」を笠に着ればどんなに無茶苦茶なワガママでも押し通せると本気で信じているかのようである。

 だが、本文に顕著であるように、キングギドラおよびその擁護者たちの言い分は、これがヒップホップというものなのだから受け入れろ、理解しろの一点張りだ。これでは何ら論理的な説明にはなっておらず、つまるところ自分たちと異なる価値観を排除する独善的な主張にすぎない。
 もしライターの提唱する「本物のヒップホップシーン」とやらがそのような反社会的な思想を有しているのであれば、ライターにとってそれがいかに価値のあるものであろうと、傍目にはカルト宗教の類と何も変わらない。

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 余談になるが、同じ特集記事の中で<腕っ節の強さでは他に類を見ないメンツが集う『ニューイヤーロックフェスティバル』 裕也ファミリーこそ最強!!>と題し、内田裕也主催のロック・イベント「ニューイヤーロックフェスティバル」を紹介している。

 短いので全文引用すると、

 音楽会(※原文ママ)最強のメンツが集まるイベントといえば、1973年から年末恒例のイベント『ニューイヤーロックフェスティバル』であることは間違いないだろう。内田裕也の仕切りで登場するアーティストは、第一回目のキャロルや頭脳警察を筆頭に、レギュラーの力也、ジョー山中、桑名正博に白龍と超凶悪、もとい超強力なメンツがそろい踏みなのである。年明けには厄除け的に非常に効果がありそうなイベントだけに、一度は生で観ることをオススメする。

 ……とのことだが、2004-2005年度以降、同イベントは海外でも同時開催されるようになり、ジョー山中は上海、白竜はソウルの方に出張するのが慣例となりつつある。「超凶悪、もとい超強力なメンツがそろい踏み」という謳い文句はすでに過去のものであり、そうした読者に誤解を与える記述は慎むべきだろう。

NEW YEAR ROCK FESTIVAL 公式サイト

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 とはいえ、掲載誌の名誉のために書いておくと、上掲の特集記事を除けば、今が旬の人気アイドルや女優の“お宝画像”から忘れ去られたB級アイドルの回顧録に至るまで、豊富な話題でなかなか楽しめる雑誌ではある。ちなみに、ヤンキー御用達雑誌「チャンプロード」の2008年7月号別冊なのだとか。

(2008年7月6日 追記)

 ……と思っていたら、上述のB級アイドルの回顧録『3人アイドルグループの傾向と対策 そしてPERFUMEへ……』は、太陽書房の「ジゲンR100 Vol.7」(ちなみにこちらは「ZIGEN EX」の2008年8月5日号増刊)にも、『〜Perfumeに至る道〜 3人グループアイドルの宿命』とタイトルを変えて、まったく同じ記事が掲載されている。見出しやリード文はおろか、アパッチとザ・チェリーズの紹介文が重複しているという誤植までそのまま(ただしミルクとソフトクリームの重複は修正されている)。どーなってるの?