『MILK』と「Prop 8」が実証する“映画の無力”

(2016年8月1日 加筆修正)

昨年公開されたガス・ヴァン・サント監督の『MILK』は、1970年代のアメリカで同性愛者の教師の登用を禁止する「Prop 6」(第6提案)に立ち向かうハーヴェイ・ミルクの奮闘を描いたノンフィクション作品であった(ちなみに監督自身もゲイ当事者である)。

ところが、今年5月26日、カリフォルニア州最高裁同性婚を禁止する「Prop 8」を有効とする判決が下さた。

カリフォルニア州では、昨年の6月にいったんは同性婚が合法化されるも、それから僅か5ヵ月後、ちょうど『MILK』が公開されたのと同じ11月に、住民の反対投票によって撤廃。そしてあたかもダメ押しのごとく、最高裁においてもその決定が支持される結果となったのである(ただし昨年6月から11月の間に婚姻届を提出したカップルについては有効) 。

『MILK』は全世界で41の映画賞を受け、ミルクを演じたショーン・ペンはアカデミー主演男優賞を獲得した。それでも、現実社会の情勢に対しては影響力をもちえなかったということであろうか。

アメリカ映画と言えば、2004年の大統領選挙に向けて、マイケル・ムーア監督がジョージ・W・ブッシュの再選を阻止すべく、2001年9月11日の同時多発テロを巡るブッシュ政権の失態と疑惑を追及した『華氏911』を発表。こちらもその年のカンヌ国際映画祭パルムドールに輝き(ちなみにラジー賞の「最低主演男優賞」としてブッシュ大統領が選ばれた)、ドキュメンタリー映画としては過去最高の観客動員数を記録しましたものの、その甲斐も虚しく再選されてしまったことは記憶に新しいところだ。