一ノ瀬文香イメージDVD『Seku-Mai』

 『ヒミツノトキ』に続き、グラビア・アイドルの一ノ瀬文香が自身のセクシュアリティである《レズビアン》をコンセプトに制作したDVD『Seku-Mai』を観た。タイトルは言うまでもなく「セクシュアル・マイノリティ」の略である。

 とはいっても発売は昨年の11月。一般のショップには流通しておらず、制作会社のサイト(およびイベント会場)でしか購入できない。そうした不便さのため、なかなか手が伸びずにいたのだ。しかも価格は通常のDVDソフトと変わらないのに、実際にはDVD−Rだった。

 本編の他に特典映像も収録されているが、そちらも本編と同じくらいの長さがあるので、実質的には2部構成となっている。

 まずは本編。一ノ瀬がグラビア・アイドルになるまでの経緯をイメージ・ビデオ風に構成しているのだが……

 うわ、キツい!

 思わず口に出してしまった。冒頭から一ノ瀬本人によるドヘタクソなナレーション。おまけにその脚本も一ノ瀬自身が手がけていて、視聴者に向かって自己肯定的なメッセージを投げかけているのだが、なげやりな棒読み口調も手伝って空疎なものに聞こえてしまう。

 それでも我慢して観続けると、女子高生、男装、ナース、ウエディング・ドレスといった様々なコスプレを披露したり、ポール・ダンスの練習風景を映したり、まぁ通常のアイドルのイメージ・ビデオと変わらない内容である。とはいえ、油断して見入っていたら例のナレーションが入ってくるから落ち着かない。

 しかしスチールではそれなりに決まっていても、動きが伴うととたんに素人っぽさが出る。おまけに顔も地味なので、奇抜な衣装だとよけいに不自然さが際立つ。

 カミングアウト以前にもDVDを8枚も出しているベテランのはずだが、私にはそのキャリアの長さは、表現者としての成熟というより、むしろ拭いがたいB級臭さをいっそう募らせているように思える。

 気を取り直して「特典」の方を観ると、本編の撮影に協力した新宿二丁目のバーやショップのオーナーに、一ノ瀬がインタビューを行うドキュメンタリーとなっている。

 ところがここで見せる一ノ瀬の姿は、相手が旧知の友人ばかりということもあってか、本編と打って変わって生き生きとしており、またインタビュアーとしても有意義な情報を引き出している。

 たとえば、FtMトランスジェンダー向けの衣類を販売する「LAUXES Co.,Ltd.」というショップは、客のプライバシーを守るため、見知らぬ客同士が顔を合わせないように完全予約制を取っているのだという。こうした情報は、セクマイ当事者ならではのきめ細やかな配慮をアピールする格好の材料と言える。

 『Seku-Mai』は、一ノ瀬文香という一芸能人が今後取るべき芸能活動の可能性と限界を、良くも悪くも如実に提示したものだ。とはいえ、少なくとも「セクマイ当事者と非当事者の橋渡し」という目標については、じゅうぶん期待を抱かせる内容である。